水の物理的要素による生体作用 — 静水圧の循環器系への影響④

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青い浴槽の水に水着姿で仰向けに浸り目を閉じている若い黒髪の女性

入浴中に息が苦しくなるのは静水圧が原因


みなさんは、入浴中に少しだけ息苦しくなる経験をされたことはないでしょうか。

容易に想像がつくとは思いますが、水の圧力が原因で、からだの表面積を1.4四平方メートルとすると、立ったまま首までつかった場合は、からだ全体に約560キログラムの静水圧が加わる計算になります。2)

このような強い静水圧によって、腹囲や胸囲が縮みます。この「静水圧」が入浴時の息苦しさの原因です。

静水圧の良い面は、以下になります。

・静水圧では、下肢に鬱滞していた血液が心臓に戻るのでうっ血が解消して全身の循環状態がよくなる
・静水圧は浮力につながるので、リハビリに利用でき、転んでも安全
・心肺機能の強化になる
・心臓への還流血液が増えると心拍出量が増えるので、軽度の心不全にはよい

など、悪いことばかりではありません。

立位で全身浴を10分間行った後に腹囲と胸囲を測定した報告があります。2)
(ドイツのカイザー)

これによると、腹囲は男性でおよそ4cm、女性で3cm、
肋骨で保護されている胸囲でも、男性でおよそ2.5cm、女性で1.5cm縮みました。

胸部は硬い肋骨で囲まれているため、外部から受ける静水圧への抵抗(防御)は堅い。そこで腹部が圧迫され、横隔膜が上方に上がる。すると肺が圧迫され、肺の中の空気の一部は軌道を通じてからだの外に出ることから肺は小さくなる2)というわけです。

実際の入浴時にもかなりの静水圧がかかっていて、呼吸が少し苦しくなるのは静水圧がかかっているためと考えることができます。

今回は、静水圧による水の物理的生体作用について、簡単な図解を交えながら詳しくご説明させていただきたいと思います。

概要

入浴中に息が苦しくなるのは静水圧が原因

目次
      1. 静水圧の体内血液分布、心肺機能に及ぼす影響
      2. 空気浴、半身浴、及び全身浴による静水圧の生体作用

静水圧の体内血液分布、心肺機能に及ぼす影響

プールで泳ぐ男性を水中から撮影

以下、現在、シリーズでお話させていただいている水の物理的要素による生体作用のお話のおさらいになります。

温泉は全身入浴の形で利用されることが最も多いので、水の物理的要素による生体作用が重要です。1)

(1)浮力
(2)静水圧
(3)水浴と腎機能と水・電解質への影響
(4)浴水温

水の物理的要素による生体作用 — 水は時を越える①

水の物理的要素による生体作用 — 水は時を越える②

水の物理的要素による生体作用 — 奴隷貿易と食塩感受性③

こちらの、(2)の「静水圧」について、今回は詳しくお話させていただきます。

水中では、推進が1m増すごとに76mmHgずつの水圧が体の表面に加わります。全身浴では、四肢や腹部などの加わる静水圧が、末梢血管(特に静脈系)を圧迫して静脈還流が増して*、心・循環系に強い負荷を与えます。1)

*血液やリンパ液を循環させている循環器系は閉鎖系。静脈は壁が柔らかく比較的容易に伸び縮みするため、静水圧が加わると圧縮され、四肢、皮膚、腹部などの静脈血は心臓に向かって移動する。このことを「静脈還流が増える」という。2)

空気浴、半身浴、及び全身浴による静水圧の生体作用

入浴で静水圧が加わると、以下の図のように体内の血液分布が大きく変わります。

空気浴、半身浴、及び全身浴による静水圧の体内血液分布、心肺機能に及ぼす影響 2)

空気浴、半身浴、及び全身浴による静水圧の体内血液分布、心肺機能に及ぼす影響 2)

空気中で立っていると、下半身の静脈中の血液は重力によって下の方にたまります。

立位で横隔膜の高さまで水中につかる半身浴をすると、静水圧の影響で下半身の静脈は心臓へ押しやられますが、この静脈還流量は約130mlです。

それは、ちょうど空気中で立位から臥位に体位を変えた時と等しくなり、この高さの水浴は、心臓病、高血圧や動脈硬化症の人たちでもあまり心臓に負担をかけずにすみます。

これが、半身浴が勧められる理由のひとつです。

首まで水につかる全身浴では、血液は胸郭内に強く押し上げられ、胸腔内圧が高まる上、静脈還流もさらに多くなります。2)

バスバブルを入れた浴槽で全身浴し、眼を閉じて顔だけ出す青年

心臓や肺に負担をかけてはいけない病気のある人には注意が必要になります。

心容量は空気中の場合より、約200~250ml増加します。1)

右心房位での中心静脈圧は、水位が剣状突起から首の高さまで上がると2~4mmHgから12~16mmHgへと上昇します。

これらの結果などから、心疾患、高血圧症などで、心容量の急激な強い負荷を避けるには、半身浴や寝浴が勧められるのです。

※効能は万人に対してその効果を保証するものではありません。

以上、今回は「静水圧」がいかに強くからだに影響を及ぼすかについてお話させていただきました。

心臓や肺に負担をかけてはいけない方は、入浴の際、水位や姿勢などにご注意ください。

水の物理的な生体作用についてのご説明は今回で最後となります。

これからも、温泉療法医としての目線で、健康づくりに役立つ様々な温泉医学情報をご紹介していきたいと思います。

セルフメディケーションの時代、ぜひ、日常にお役立ていただけましたら幸いです。

本日はご訪問・ご拝読頂き、誠にありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。

参考文献
1)第4版温泉療法の手帖(2003)社団法人 民間活力開発機構 p.31-35
2)温泉と健康(2009)阿岸祐幸 p.21-23

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