水の物理的要素による生体作用 — 水は時を越える①

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ローマン・バス 観光客のいる内部
ローマン・バス 出典:Wikipedia
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水浴は人類最古の治療法

温泉療法というと、温かいお湯への全身入浴のみをイメージされることがほとんどではないでしょうか。

有史以来、水は、医学、魔術、宗教と結びついてきました。バルネオセラピー(入浴療法・温泉入浴療法)、つまり水浴や入浴、特にミネラル・ウォーターへの入浴は人間の歴史のなかでも最古の治療法の1つ。

多くの古代文明—バビロニア、エジプト、ギリシャ、ヘブライ、ペルシャ、中国—の文献に、水による独特の医療効果について記されているのです。1)

温泉は全身入浴の形で利用されることが最も多いので、水の物理的要素による生体作用が重要です。2)

(1)浮力
(2)静水圧
(3)水浴と腎機能と水・電解質への影響
(4)浴水温

上記のうち、もちろん、(4)の水温、温かい湯による効果が一番重要ではありますが、現代では、浮力・水圧・体温と同じ程度の水温での入浴による効果も医学的に詳しく説明することができます。

これから、数回に分けて、その水自体の物理的な人体への作用についてご紹介させていただきたいと思います。

少し読み進めていただくと、どなたにも実感できる水中での感覚であったり、子どもの頃に教わった理科の知識の範囲で十分ご理解いただけるものです。

物理・理科アレルギーの方も、どうぞご安心して読み進めてください。

概要

水浴は人類最古の治療法

目次
      1. ギリシャ人とローマ人も水浴治療を利用していた
      2. 温泉浴の直接作用による効果

ギリシャ人とローマ人も水浴治療を利用していた

前のブログでローマ式浴場を主題とした映画「テルマエ・ロマエ」のお話に少し触れましたが、古代ギリシャ人も個人の衛生管理と健康との関連性を認識していました。

水の物理的要素による生体作用 — 水は時を越える②

ギリシャ人もローマ人も温水浴と冷水浴を推奨するとともに、冷水治療法を確立させていて、健康を維持に努めていたといわれています。1)

その方法は、古代ギリシャのスパルタであれば、冷たい川に身を浸す、ローマ帝国時代であれば、アフュージョン(洗礼で水をかけること。単に水をかける)を用い、温水と冷水を交互に使用するなど、当時確立された人体生理理論はその後の医学に、何世紀もの間、影響を与えました。

具体的な方法と時代については次回以降お話させていただきます。

温泉浴の直接作用による効果

水の物理的要素による生体作用の概要は以下になります。2)

(1)浮力
全身浴では、浮力により、体重は空気中の場合の9分の1ほどになり、運動が容易になります。水は体を支える作用もあり、神経障害や筋肉が弱くて空気中では起立できない人でも、わずかの支えで立つことができ、リハビリテーションでの積極的な運動療法を行う動機づけになります。水中で速く体を動かすと、水の粘土や摩擦抵抗のため、より多くのエネルギーを要して肥満対策によく、また筋力や心肺機能の強化に応用されます。

(2)静水圧
水中では、推進が1m増すごとに76mmHgずつの水圧が体の表面に加わります。全身浴では、四肢や腹部などの加わる静水圧が、末梢血管(特に静脈系)を圧迫して静脈還流が増して、心・循環系に強い負荷を与えます。

(3)水浴と腎機能と水・電解質への影響
熱くも冷たくも感じないで、生体機能の変化が最も少ない水温(不感温度、36℃前後)での水浴を長時間すると、尿量、尿中ナトリウム、カリウム排泄量が増加します。この水溶性水・電解質利尿には多くの因子が関わります。

(4)浴水温
水浴による生体作用のうち温熱効果が最も重要で、末梢血管拡張による血流増加作用、筋・関節組織の柔軟化、鎮痛効果、代謝の亢進(高ぶり)などがあります。

※効能は万人に対してその効果を保証するものではありません。

以上、今回は古代より健康維持のため、医師によって利用されてきた水浴治療、また、現代における温泉療法でいわれるところの一般的な水の物理的な生体作用についての概要をご説明致しました。

水浴治療と水の物理的な生体作用については、次回以降、詳細をご紹介させていただきます。

これからも、温泉療法医としての目線で、健康づくりに役立つ様々な温泉医学情報をご紹介していきたいと思います。

セルフメディケーションの時代、ぜひ、日常にお役立ていただけましたら幸いです。

本日はご訪問・ご拝読頂き、誠にありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。

参考文献
1)THE SPA BOOK(2009)ジェーン・クレビン・ペイリー、ジョン・ハーカップ、ジョン・ハリントン 編訳(社)日本スパ協会 医学監修 伊藤悦男 p.8–9
2)第4版温泉療法の手帖(2003)社団法人 民間活力開発機構 p.31-35

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