源泉掛け流しにこだわる理由 — 天然温泉の老化現象

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源泉掛け流し 木の浴槽淵
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『源泉掛け流し』以外は温泉じゃない?!

『源泉掛け流し』を謳うには、湧き出したままの成分を損なわない源泉が、新鮮な状態のままで浴槽を満たしていることが条件となります。

温泉水で生体に対する薬効を期待するには、湧出直後の新鮮な温泉を利用するのが原則です。

多くの温泉施設では、源泉を地下水などで薄めたり(加水)、循環・ろ過・塩素消毒の操作をしているのを見かけます。それでは、もはや、本来の温泉とはいえません。

さらに困ったことに、浴槽の掃除を十分しないようなところでは、レジオネラ菌による肺炎が起こったり、塩素を温泉水に加えると好ましくない塩素性皮膚炎や結膜炎などが起こる可能性があります。

概要

『源泉掛け流し』以外は温泉じゃない?!

目次
      1. 9種類の療養泉とは
      2. 天然温泉の老化現象(エイジング)

9種類の療養泉とは

温泉とは、

「地下から湧出する温水、鉱水、水蒸気、あるいはその他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、温泉源での温度が25℃以上のものか、特定の物質のうち、いすれか一つが基準値以上を含むもの」

です。

温泉のうち、泉温・含有成分の質・組成・量などからみて、

「薬理学的に医治効果が期待されるもの」を特に療養泉といい、

泉水中の含有成分の基準値が決められています。

そして、療養泉はその主成分により9種類に分けられます。

・二酸化炭素泉(通称炭酸泉)
・炭酸水素塩泉(重曹泉など)
・塩化物泉(食塩泉が代表)
・硫酸塩泉
・鉄泉
・硫黄泉
・酸性泉
・放射線泉
・単純泉

になりますが、詳細解説については次回にさせていただきたいと思います。

天然温泉の老化現象(エイジング)

ここからが本題となります。

雨水のような地表水と異なり、高温・高圧の深い地下でできた温泉水は、地表の1気圧、15℃といった条件のところに湧出すると、温度や圧力が急に低下し、日光や空気にさらされると、物理化学的性質も変化します。

また、地下深部ではよく溶解していたガス成分が地表に湧出すると、たとえば炭酸泉の炭酸ガス、硫化水素泉の硫化水素ガス、放射線泉のラドンなどの期待成分は、時間とともに空気中にどんどん蒸散してしまいます。

さらに、地下深部では過飽和状態だった成分、たとえばカルシウム・マグネシウム・硫黄などは沈殿して結晶を作るようになります。鉄泉の鉄は湧出直後は無色透明の2価の鉄ですが、空気に触れ始めるとすぐに、酸化して、茶褐色の3価の鉄(さび)となり、生物活性が失われることになります。

このように、多くの温泉水は地上に湧出後、時間とともに物理化学的性質が変わってしまい、薬効も低下したり全くなくなってしまうものがあります。この現象が温泉水の老化(エイジング)現象であり、鉄泉、炭酸泉、硫化水素泉、放射能泉などで強くみられるものです。

このエイジングによる温泉水の劣化が少ない『源泉掛け流し』の温泉が本物の温泉といえることがこれでご理解いただけたかと思います。

『源泉掛け流し』であることが重要な理由をご存知な方は多くいらっしゃると思いますが、今回はその物理や化学的なことについてご紹介させていただきました。

次回以降は、治療効果のある療養泉(泉質)9タイプの分類と効能、4つの温泉水含有成分の生体作用についてお話させていただきます。

これからも、温泉療法医としての目線で、健康づくりに役立つ様々な温泉医学情報をご紹介していきたいと思います。

セルフメディケーションの時代、ぜひ、日常にお役立ていただけましたら幸いです。

本日はご訪問・ご拝読頂き、誠にありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。

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